腕時計の日付(カレンダー)の合わせ方|夜8時〜朝4時は触らないで。修理技能士が教える壊さない手順

腕時計の日付の合わせ方。夜8時〜朝4時は日付を触らない

こんにちは、ふたさまです。一級時計修理技能士として、腕時計の修理に携わっています。

「しばらく使っていなかった時計の日付を合わせたら、次の日になっても日付が変わらない」

修理の現場では、こういう相談がときどきあります。原因の多くは、日付を合わせてはいけない時間帯に、日付を動かしてしまったことです。

実は、日付を毎日きちんと合わせている人はそれほど多くありません。でも、日付を合わせる人のほとんどは、「触ってはいけない時間帯」があること自体を知りません。だから、たまに合わせたときに壊してしまう割合が高いんです。

この記事では、壊さない日付の合わせ方と、午前・午後を間違えないコツをまとめます。


結論

  • 時計の針が夜8時〜朝4時を指しているあいだは、日付を動かさない(説明書の時間は時計によって違うので、余裕のあるほうでひとつ覚える)
  • 日付は「前の日」に合わせてから、針を回して今日にすると、午前・午後を間違えない
  • 回す向き・リューズを何段引くかは機種によって違う。迷ったら説明書を確認
  • ねじ込み式リューズは、最後に必ずねじを締める

なぜ夜8時〜朝4時はダメなのか

日付は、夜中に少しずつ切り替わる準備をしています。時計の中では、日付を送る歯車が、夜9時ごろから日付の板にかみ合い始めて、深夜0時ごろに1日分送ります。

このかみ合っている最中に、リューズで日付を無理やり動かすと、歯車どうしがぶつかります。セイコーの説明書でも、午後9時から午前1時までの間は日付を修正しないようにと書かれていて、そうしないと翌日になっても日付が切り替わらない、故障の原因になることがあるそうです。

ただ、日付が切り替わり始める時間・終わる時間は時計によって違います。0時ぴったりではなく、前後にずれて、ゆっくり切り替わる時計もあります。

同じセイコーグループでも、セイコーの 4R35 などは「午後9時〜午前1時」、グランドセイコーの 9F クオーツは「午後9時〜午前3時」と、説明書に書かれている時間が違います。

ちなみに私が時計の仕事を始めたころは、先輩から「夜8時〜朝4時は日付を触るな」と教わりました。時計によって違うなら、いちばん広く見ておけば間違いない、という考え方です。

最近の時計は、0時ごろに日付がパッと一瞬で切り替わるものが多くなっています。ただ、一瞬で切り替わる時計も、その前の時間から中でバネに力をためて準備をしているので、夜のあいだに日付を触ってはいけないのは同じです。

曜日も表示する時計(デイデイト)も要注意です。日付が変わったあとに曜日が切り替わる時計もあり、深夜3時ごろまでかかるものがあります。

とくに古い時計は注意が必要です。昔の時計には、日付が深夜にじわじわと時間をかけて切り替わるものもあります。また、長くオーバーホールしていない時計は、中の油が古くなって動きが重くなり、日付の切り替わりが説明書の時間より遅くまでかかることもあります。

時計ごとに説明書の時間を覚えておくのは大変です。人はだいたい、ひとつのルールしか覚えていられません。私が新人のころに教わった「8時〜4時」を今でも覚えているように、覚えるならひとつ、それも余裕のあるほうがいいんです。

なので私も、先輩から教わったとおり、「夜8時〜朝4時」は触らないことをおすすめしています。この幅なら、曜日つきの時計や古い時計まで含めて、まず安心です。

時計の針が「夜8時〜朝4時」を指しているときは、日付に触らない。まずはこれだけ覚えておけば大丈夫です。

注意したいのは、「今の本当の時刻」ではなく「時計の針が指している時刻」で考えることです。止まっていた時計の針が夜10時で止まっていたら、昼間でもその時計は「夜10時」です。

また、この時間帯はクオーツ時計にもあります。電池で動く時計だから大丈夫、というわけではありません。


壊さない日付の合わせ方(基本の手順)

ここでは、リューズが「0段目(押し込んだ状態)・1段目(日付)・2段目(時刻)」の、よくあるタイプで説明します。

  1. ねじ込み式リューズなら、ねじをゆるめる
  2. 針が夜8時〜朝4時にあったら、先に時刻をずらす
    リューズを2段目まで引いて、針を朝4時より先(たとえば朝6時ごろ)まで進めてから、リューズを戻します。
  3. リューズを1段目まで引いて、日付を「前の日」に合わせる
    今日が6日なら、5日にしておきます。
  4. リューズを2段目まで引いて、針を進める
    針を進めていくと、どこかで日付が今日(6日)に変わります。日付が変わったところが「深夜0時」です。そこから今の時刻まで針を進めます。
  5. リューズを押し込む
  6. ねじ込み式リューズなら、ねじを締める

「前の日」に合わせる理由

いきなり今日の日付に合わせると、午前と午後を取り違えることがあります。そうすると、日付が夜中ではなくお昼の12時ごろに変わる時計になってしまいます。

前の日に合わせてから針を回せば、日付が切り替わったところが深夜0時だと分かるので、午前・午後を間違えません。

回す向きは機種によって違う

日付を送るときにリューズを回す向き(右回り・左回り)は、時計によって違います。逆に回して日付を送る時計もあるので、「右に回せば日付が進む」とは決めつけないでください。セイコーの説明書を見ても、機械式の 6R35 は左回り、クオーツの V192 は右回りで日付が進みます。

片方に回して日付が動かなければ、反対に回してみてください(曜日付きの時計では、反対に回すと曜日が動く機種もあります)。ただ、引っかかるのに力を入れて回し続けるのはやめましょう。


月末は「31日」を「1日」に直す

ふつうの日付付きの時計は、どの月も31日まであるものとして動きます。そのため、

  • 2月(28日、うるう年は29日)
  • 4月・6月・9月・11月(30日まで)

の次の日の朝は、日付が「1日」ではなく「29日」「30日」「31日」などになっています。

このときは、時計の針が夜8時〜朝4時にないことを確かめてから、リューズを1段目に引き、日付を「1日」まで送ってください。


しばらく止まっていた時計を使うときの順番

引き出しにしまっていた機械式時計や、電池を交換したばかりのクオーツ時計は、日付も時刻もずれています。順番はこうです。

  1. 機械式なら、まずゼンマイを巻く(リューズを0段目のまま回す。自動巻きもリューズ20〜30回転くらい)
  2. 上の「基本の手順」で、日付と時刻を合わせる

指でリューズを回すとき、1回つまんでひねっても、リューズは半回転くらいしか回っていません。なので「1、2、3…」と指の回数で数えるなら、40〜60回ひねって、やっとリューズ20〜30回転分です。思っているより多めに巻いてください。

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こんなときはお店へ

  • 日付がまったく動かない、またはリューズが空回りする
  • 次の日になっても日付が変わらない(正しい手順で合わせ直しても)
  • 日付が中途半端な位置で止まっている(数字が半分ずれて見える)

無理に回し続けると、日付を送る部品を傷めることがあります。長くオーバーホールしていない時計なら、あわせて相談するのがおすすめです。

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まとめ

  • 時計の針が夜8時〜朝4時のあいだは、日付を動かさない(時計によって違うので、余裕のあるほうで覚える。クオーツも同じ)
  • 日付は前の日に合わせてから、針を回して今日にする。変わったところが深夜0時
  • 回す向きやリューズの段数は機種で違う。動かなければ反対に。力ずくはNG
  • 小の月の翌月1日は、日付を手で1日に送る
  • ねじ込み式リューズは最後に締める

時間の合わせ方そのものは、こちらの記事で動画つきで説明しています。

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