こんにちは、ふたさまです。一級時計修理技能士として、腕時計の修理に携わっています。
「オーバーホールって何年ごとに出せばいいの?」
時計好きならよく聞く質問です。ネットで調べると「3年ごと」とよく書かれています。でも修理する側から言うと、すべての時計が3年ごとに出す必要があるわけではありません。
この記事では、時計のタイプや年式ごとの目安と、定期的に出すいちばんのメリットをまとめます。
結論
- 機械式時計の目安は、よく言われるとおり3年ごと
- ただし、古い時計はその頻度で出したほうがいい。新しい時計なら、遅れる・持ちが悪くなるなどの症状が出てからでもいい
- 古いか新しいかの境目は、部品がまだ手に入りそうかどうか
- クオーツ時計は、症状が出て、それでも直したいときにでいい
- 定期的に出すいちばんのメリットは、急な出費を防げること
オーバーホールとは
オーバーホールは、時計の中の機械(ムーブメント)を分解して、洗浄し、油をさし直して、組み立て直す作業です。すり減った部品があれば交換し、最後に精度や防水性を確認します。
人間でいえば、定期的な健康診断と治療をまとめてやるようなものです。
機械式時計:「3年」は古い時計の目安
古い時計は3年ごとに
機械式時計のオーバーホールは、3年ごとが相場とよく言われます。
とくに古い時計は、この頻度で出したほうが安心です。古い時計は、部品がこの先手に入らなくなるかもしれません。こまめに手入れして、部品の交換が必要になる前に状態を保っておくことが大事です。
新しい時計は症状が出てからでもいい
逆に、比較的新しい時計なら、3年たったから必ず出す、というほどでもありません。
- 遅れるようになった
- ゼンマイを巻いても、動く時間(持ち)が短くなった
こうした症状が出てから出す、という考え方でも大丈夫です。
「古い」「新しい」の境目は?
境目は、何年たったかよりも、その時計の部品がまだ手に入りそうかどうかです。
メーカーがまだ部品を持っている時計なら、症状が出てから直しても間に合います。部品が手に入りにくくなっている時計は、壊れてからでは直せないこともあるので、定期的に手入れしておくほうがいいわけです。
目安になるのが、メーカーが修理用の部品を持っておく期間です。たとえばセイコーは、取扱説明書で「補修用性能部品の保有期間は、通常7年を基準としています」としています。
つまり、その時計の製造が終わってから7年を過ぎているかどうかがひとつの目安です。ただ、安いモデルは部品がなくなるのが早いこともあります。気になる場合は、メーカーに部品があるか問い合わせてみるのが確実です。
クオーツ時計:症状が出てからでいい
電池で動くクオーツ時計も、オーバーホール自体はできます。
ただ、1980年代ごろの古いクオーツでなければ、修理ではオーバーホールよりもムーブメント(中の機械)ごと交換になることのほうが多いです。
なので、クオーツ時計は定期的に出すというより、止まる・遅れるなどの症状が出て、それでも直したいときに修理に出す、で十分です。
「電池を替えたのにすぐ止まる」というときは、電池や機械ではなく磁気帯びが原因のこともあります。
関連記事:腕時計の磁気帯び、原因と症状と直し方
関連記事:腕時計の電池交換、どこに出す?
定期的に出すいちばんのメリットは「急な出費を防げる」
「止まってないし、まだ大丈夫でしょ」と思う人も多いと思います。
でも、定期的にオーバーホールに出すいちばんのメリットは、実はお財布へのダメージを小さくできることです。
- ある日突然「直すのに数万円かかります」と言われる
- 「3年ごとに数万円かかる」と分かっていて、心の準備ができている
同じ金額でも、この2つでは気持ちのダメージがまったく違います。
個人的には、オーバーホール積み立てやオーバーホール保険みたいなものがあったら面白いのに、と思います。
時計店によっては、買った日に入れる「延長保証」はあります。ただ、これは故障や破損に備えるもので、定期的なオーバーホール代を積み立てる仕組みとは別物です。
なので、自分で積み立ててしまうのがおすすめです。時計を買ったら、毎月少しずつオーバーホール代を取っておく。そう考えておくと、いざというときに慌てずに済みます。
また、長年オーバーホールしていない時計は、ちょっとしたきっかけで不調が表に出ることがあります。磁気帯びで持ち込まれた時計が、実は油切れや部品のすり減りが本当の原因だった、ということもあります。
メーカーと修理店、どっちに出す?
部品の交換が必要ならメーカー
判断の基準は、部品の交換が必要になりそうかどうかです。
遅れる、止まる、持ちが悪いなど、すでに症状が出ている時計は、部品の交換が必要になる可能性があります。その時計の部品をいちばん確実に持っているのはメーカーです。
安く済ませたいなら、メーカーの料金を調べてから修理店へ
費用を抑えたいなら、民間の修理店という選択肢もあります。
ただし、先にメーカーの料金を調べておくことが大事です。「修理店のほうが安いだろう」と思って出したら、実はメーカーのほうが安かった、ということもあります。
料金はメーカーや時計によって違い、改定されることもあるので、最新の料金は各メーカーの公式サイトで確認してください。
見積もりをもらったら
オーバーホールに出すと、まず見積もりが出てきます。でも、
- この金額は妥当なの?
- この部品交換は本当に必要?
- あとから追加料金がかかることはない?
と迷う人も多いはずです。
見積もりの読み方は、noteで詳しくまとめています。見積もりの項目を4つに分けて、「削っていい項目」と「削ってはいけない項目」の見分け方を解説しています(途中まで無料で読めます)。
→ オーバーホール見積もりの読み方 ― その金額は妥当か?(note)
まとめ
- 機械式時計のオーバーホールは3年ごとが目安。ただし古い時計向け
- 新しい時計なら、遅れる・持ちが悪いなどの症状が出てからでもいい
- 古いか新しいかの境目は、部品が手に入りそうかどうか
- クオーツ時計は、症状が出て、それでも直したいときに
- 定期的に出すメリットは、急な出費を防げること
- 部品交換が必要そうならメーカー。安く済ませたいなら、メーカーの料金を調べてから修理店へ
