競馬AI開発記録・第4話|展開情報の追加と仮想成績
速さや対戦相手の材料を足した次は、展開の情報も試している。
前へ行く馬が多いのか。ほかの馬と比べて、どの辺を走りそうなのか。
競馬を見ていると気になるところなので、AIの材料にもしたら役に立つんじゃないか。
ただ、今回の結果はそう簡単ではなかった。追加した3方式は、どれも通算回収率が100%を下回った。
今回も過去データでの仮想購入。実際に馬券を買って負けた報告ではない。
展開の特徴量|過去の通過順位から先行傾向を見る
今回加えたのは、過去の通過順位から作る8項目だ。
過去5走の記録を使い、前の方を走っていた割合や平均的な位置、同じレースに出るほかの馬の先行傾向などを数字にする。
ボクがレースを見て「前へ行きたい馬が多そう」と考えるような部分を、記録から扱おうとしている。
といっても、未来の展開を見通せるようになったわけではない。過去の位置取りを材料として足した段階だ。
それと、通過順位がないことは、後ろを走っていたこととは違う。直線競走など、そもそも最初のコーナーの記録を同じように扱えない場合もある。材料がないところまで、観測できた脚質として扱わないようにする必要がある。
前回と同じ条件で比べる
対象は2022年1月1日〜2026年8月30日の14,525レース。各年より前のデータで学習する。
単勝の予想1位について、予想勝率×オッズが1.10以上なら100円を買った計算にする。対象と購入条件をそろえ、方式だけを比べている。
ここでの「基準」は、前回までにも登場した市場残差モデル。比較のたびに別の方式へ入れ替えてはいない。
| 方式 | 購入件数 | 的中件数 | 仮想購入額 | 仮想払戻額 | 仮想損益 | 回収率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 基準の方式 | 346 | 86 | 34,600円 | 33,990円 | −610円 | 98.24% |
| 展開情報を加えた線形モデル | 535 | 128 | 53,500円 | 48,820円 | −4,680円 | 91.25% |
| 展開情報を加えた木モデル | 40 | 9 | 4,000円 | 3,020円 | −980円 | 75.50% |
| 基準と展開情報の木モデルを半分ずつ混ぜる | 35 | 8 | 3,500円 | 3,420円 | −80円 | 97.71% |
前回、速さと相手の情報では、混ぜた方式が145.71%だった。
今回は混ぜても97.71%。線形モデルは91.25%で、木モデル単独は75.50%だった。
材料を増やした分だけ強くなる、とはいかないらしい。
同じ35件でも、同じ馬券ではない
前回のよかった方式も35件。今回混ぜた方式も35件。
件数は同じだけど、同じレースや同じ馬を選んだという意味ではない。予想が変われば、購入条件を満たす候補も変わる。
今回混ぜた方式の年別結果を見てみる。
| 年 | 購入件数 | 的中件数 | 仮想購入額 | 仮想払戻額 | 回収率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022 | 25 | 4 | 2,500円 | 1,780円 | 71.20% |
| 2023 | 5 | 3 | 500円 | 1,230円 | 246.00% |
| 2024 | 2 | 1 | 200円 | 410円 | 205.00% |
| 2025 | 2 | 0 | 200円 | 0円 | 0% |
| 2026年8月30日まで | 1 | 0 | 100円 | 0円 | 0% |
200%を超えた年だけ取り出すと、すごそうに見える。でも、2023年は5件、2024年は2件だ。
いちばん購入が多かった2022年は71.20%。全部合わせると、3,500円に対して3,420円が戻り、80円のマイナスになる。
年ごとの回収率を単純に平均するのではなく、購入総額と払戻総額から計算する。ここを雑にすると、同じ結果でもよく見えてしまう。
展開の情報がいらない、ともまだ言えない
今回の追加で回収率は上がらなかった。
でも、それだけで「競馬に展開は関係ない」と結論を出せるわけではない。今回使った材料の作り方、このモデル、この購入条件では、こうなったという結果だ。
悪くなった原因を一つに絞れる記録は、まだない。そこは分からない。
今回も、繰り返し調べている過去の期間を使った探索だ。確定した出走情報や正常完走を前提にする対象選びの制約があり、まっさらな実戦環境での成績ではない。本番モデルも変更していない。
足すだけでは、うまくいかない
ボクは面倒なことをAIに任せたい。でも、数字を見るところまで任せきりにして、いちばんよさそうな結果だけ採用したら危ない。
速さと相手を足した実験には、よく見える結果があった。展開を足した今回には、下がった結果があった。
両方残して、次を考える。
実際に1万円を動かす前には、予想の成績だけでなく、お金をどう分けて記録するかも必要になる。次は、用意した仮想AI財布の話を書く。
記録:EXP0003。2026年9月15日時点の保存ログを使用。各方式の金額は別々の仮想計算で、実際の購入額・払戻額ではない。